行き先は、南アルプスの南麓から西麓へかけての地域。東京方面からだと、東麓は行きやすいのだが、南や西は、なかなか行けない。新しいカブで、久しぶりに走ってみよう。
ドーンと、静岡まで東名高速で一気に行く。なんて、楽はできないので、ひたすら地を這って行く。
川崎市宮前区発5:09→R246→沼津からR1→静岡。土曜日なのに、思いの外、トラックが多い。7:10 R246長泉町で給油。沼津からR1へ。まだ早い時間なのに、R1は車が多く、げんなり。しばらく走ると、スムーズに流れ出す。流れ出すと、カブには速すぎるスピードで、これまた大変。道なりに走っていると、いきなり自動車専用道路の標識。静清バイパスは、通れないのか! 迂回路などの表示もなく、間に合わせで左折したが、道に迷った。その後、静岡とか浜松とかの道路標示通りに行くと、またバイパスに出たりして、かなり苛立つ。虐げられているな、原付は…。
静岡から、梅ヶ島温泉方面へ向かう。移動区間が終わり、やっと、ホッとする。止めていた呼吸を、何時間ぶりかにした感じ。井川方面への道へ。道幅が狭い、うねうねとしたコーナーが続く。登りでもあり、カブでは、ちょっと走りづらい。ただ、ほとんど車が走ってない。自分のペースで存分に走れそうだ。今回は、こんな道がほとんどだろう。所々にある集落では、茶摘みが行われている。狭い山峡に作られた茶畑なれど、見事に手入れされていて感服する。 ぐんぐんと、山中に入り込む。口坂本温泉を過ぎて、9:34大日峠(195km)で一服。静かな峠。ツーリングに出た実感がわいてくる。 ![]() ガソリンがやばくなるも、スタンドがある感じがしない。ちょっと焦るも、ペースは変えずにいく。気田の集落で給油。狭い道の反対側にある雑貨店の中に気を送ると、やはり、そこのおばちゃんが給油しに来た。のんびりした接客も、こういう所だと気にならない。美しい気田川沿いを、脇見運転。よそみ運転。
秋葉神社駐車場前の河原で休憩。(278km) 気田川は、いい川だ。心の底から、ほっとする。 ぼーっとしながら、この川でカヌーが沈した時のことを思いだす。それをきっかけに、記憶の底に沈んでいた、さまざまな事を思いだす。……。 ![]() 山住峠で休憩。山住神社を覗いてみる。"○○家"と紙が貼られたマイクロバスが止まっていて、祭殿で祝詞を上げていた。水窪ダム(353km)への下りは、ほとんど未舗装。せっかくエッチラと稼いだ高度を、一気に放出。尾根から一転、木々に囲まれた谷底の道を走る事になる。鬱蒼とした森、美しい沢。 北の南信濃村へ向かう。狭い山道。すれ違う車もない。カブ一つ、山の中を行く。現実感がなくなり、この山の中の街道を行くと、江戸以前の宿場に辿りつくような感覚に支配される。 14:50兵越峠 標高1168m。ヒト気がなく、寂しい雰囲気。 ![]() ちょと行くと、少し前まで雷雨が降っていたらしく、路面がビショビショだ。積乱雲からの冷気が吹き込み、寒い。寒さに震えながら、「こんなの抜けてしまえば、それまでだ」と、飛ばす。気が付くと、曲がるべき道を、遥かに過ぎていた。あれま、ということで、せっかく抜けた、濡れた路面を戻って、15:57下栗(410km)地区を目指す。ここは、だいぶ前に通ったことがあるのだが、記憶から消えている場所。最近では、"日本のチロル"と広報されている。のそのそと、しばらく坂道を登る。下栗の集落は、南アルプスと対峙する急斜面に、へばりついている。急斜面は、肉眼では底が確認できないほどの、深い深い谷へと落っこちている。気を抜くと、谷へ落ちてしまいそうな感じだ。人が代々生活してきた景観には、圧倒されるものがある。ここで長いこと暮らすと、崇高な人間になれそうだ。 こんな小さな集落にも、カブは直ぐに馴染んでしまい、風景の一部となる。こういう所では、顔をじっと見つめられる。『 カブ = 地元の人間 = 顔見知り 』という図式で、知り合いの誰なのかを判別しているようなのだ。こちらが挨拶をすれば、かならず挨拶してくれる。懐かしい知り合いに会えたような、不思議な感覚である。
集落を上へ抜けると、しらびそ峠への道となる。かなり寒い。ここには、春はまだ来ていない。雄大な風景の中を、ちっぽけなカブが走る。
しらびそ峠付近は未舗装で、標高も高く、景色も良い。山岳林道の極みみたいな所である。そんなわけで、景色の良いスペースには、これ見よがしの四駆車が停車している。そんな、悦に入っている四駆野郎を撃破しながら、カブは走る。 『本日 川崎発』のノボリを背負うと、一層効果があるかもしれない。四駆で来れるぐらい、あたり前のこと。 ![]()
キャンプ場は、駒ヶ根の町を見下ろし、中央アルプスを正面に眺める場所にある。予想通り、まだ営業してなかった。よって、避難小屋も開いてないし、水も出ない。もう、"ビール喉ごしモード"に入ったので、走る気にはならない。まあ、水は持っているので、何とかなるだろう。屋根のあるベンチを、一夜の宿としよう。
陣馬形キャンプ場5:30発。昨日キツネが走っていた牧場を、期待を込めて眺めてみる。ん! なんだ? 双眼鏡に映ったのは、アナグマだった。ユーモラスな動き、小さな耳、つぶらな瞳、なんて lovely なんだ。 向こうはこちらに気づかずに、10mくらいまで近づいて来た。あまりのことに、興奮気味。突然、こちらに気づいて、慌てて斜面を下りだした。不器用に走る姿が、また愛らしい。 折草峠までの未舗装路では、シカに遭遇。早朝は、こんなことが多い。カブのエンジンが静かなのも、有効だ。 駒ヶ根カントリークラブ近くの林道を走る。地図には、景色が良いとあったが、イマイチだった。下りで、枝林道からキャンプスタイルのオフロードバイクが来た。「こんなに、朝早く… キャンプだね。(^^)」とフレンドリーな気分だったが、向こうは、地元の人間と思ったに過ぎないだろう…。 そろそろ給油しなければならないが、まだ早過ぎるので、分杭峠方面へふらふらと走ってみる。貴重な朝の時間を、贅沢に過ごす。 7:15高遠で給油して、町道高峰線を上る。尾根筋を走る未舗装。景色も良い。朝日の当たる場所で、一服。冷えた身体を暖める。 ![]() 富士見側に下る。しばし走った所に、温泉があった。迷わず、入湯。白州塩沢温泉。入浴料600円。空いていた。冷えた身体が、ジンジンと暖まる。野宿後の温泉は、格別だ。温めの源泉に浸かって、たっぷりとくつろぐ。幸せ。 上がろうとしたとき、のぼせ気味な事に気づく。水を浴びて、頭と身体を冷やす。無事クリアと思ったが、着替えの途中で立ち眩んでダウン。しばらく、横になって回復を待つはめに…。やはり、限度を超えてはいけませぬ。 風呂上がりに、アイスクリームを食べながら、流れていた『いつみても波瀾万丈・杉田かおる』を見る。ツーリング中にTVを見ててもしょうがないとは思いつつも、番組にハマって、なかなか出発できなかった。八ヶ岳方面も走ろうかと思っていたが、そんな気は失せて、だらーと帰ることにする。この時間なら、道も空いているし、早い時間に帰れる。10:30発。 R20を相模湖まで。拍子抜けするほどスムーズに流れた。相模川沿いからR246へ出て、14:17帰宅。本日走行286km。 いい時間に帰れたので、日曜の午後を、のんびり過ごせた。軽装だと、片づける物もなくて、非常に楽だ。これは、クセになるかも…。
|