朝3時過ぎに起床。時差が抜けない(笑)。テントから顔を出して、天気の確認。 曇り。星は見えない。テントはそのままで、焼石岳登山へ向かう。 3:24発。昼間でも寂しい道は、まったくの暗黒である。 ヘッドライトとテールライトが届く範囲が、暗闇に浮いているだけ。暗闇は、妄想を生んで、やけに後ろが気になる。 前方でキラリと光ったのは、キツネ親子の目であった。短い足で、懸命に走る子ギツネが可愛らしい。 しばらくすると、濃い霧がかかって来て、わずか先の路面も見えない。とてもスピードを出せる状態でなく、スピードを落として運転に集中。夜霧の中は現実感覚に乏しく、夢の中のよう。意識をしっかり保たないと、真っ直ぐに突っ込んでしまいそうだ。 徐々に空が明るくなり、緊張もほぐれる。峠のトンネルを抜けると、霧はなく、明けゆく空がドーンと広がった。
4:03湯沢側三合目登山口着。つぶ沼から22km。まだ星の支配下にある森は、霊気に満ちていて、立ち入りを拒まれている感じがある。そんな薄暗い森に踏み込むには、気合が必要。ヒト気のない山中を深く分け入る。見晴らしの利く小高い場所から眺めると、山頂は谷を越えた先に見える。思ったよりも遠いことに驚くが、そこに至る緩やかな谷を歩けると思うと、心が躍る。緩やかな広葉樹の森が実に素敵なのだ。沢まで下ってから、再び登りになる。そのうちに、樹林は切れ切れになって、草に覆われた道になる。濡れた草が当たって、ズボンがびしょ濡れになる。雨具を履くのも不快なので、そのまま行くが、濡れたズボンから靴下へ水が浸透して、靴の中までも濡れてしまった。標高を上げるにつれ、霧がかかる。天気が良いのか、悪いのか判らない。白い視界の中に、可憐に咲く花々が賑やかだ。 ![]() ほどなく、頂上に到着(7:33)。風強く、流れる霧に囲まれて、見晴らしは無し。ぽつり、ぽつりと雨も当たる。片隅で、初老の男性が大きな声で独り言を言っている。否応なく、奥さんと携帯電話で話しているというのが分かる。時代は変わったものだなぁ。携帯電話があれば、遭難して事切れそうな時も、別れの挨拶ができそうだ。長野から来た男性で、別の登山口から登ったとのこと。 霧は晴れそうにないので、軽く休憩して下山する。しばらくの間、雨に降られて、傘をさして歩いた。かなり下った所で、数名の登山者とすれ違う。山中で出合ったのはそれだけ。深田百名山でないので、静かな山である。麓まで下ると、上の雨がウソのようで、晴れに近い薄曇りであった。10:05登山口着。 美しき東北の山を味わって、とても満ち足りた気分。
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10:15発。キャンプ場に向かう。荷物も軽く、ここぞとばかりにワインディングを堪能する。なにせ、車など走ってない。ブナの森を、風のように駆け抜ける。ある左コーナーで、アナグマが食事に夢中になっていた。その目はイっていて、恐ろしい顔。こちらに気づいて逃げ出したが、カブを止めて見たら、直ぐ横の草の間にいた。目がイっているのが、元々の顔だったようだ。
岩手県側に下り、平地の西の山麓沿いを北上。ここも、97秋に走った快適な道。車もなく、かなりハイペースで走れる。途中、タイトな右コーナーがあって、ルンルンで倒し込んだら、路面の荒れた部分の衝撃でブレーキペダルがガツンと接地してしまった。その反動で振られて、カブはカーブの外側へ…。そこには、車1台分くらいのスペースがあったのだが、うすーく砂利が溜まっているのであった。
12:30大沢温泉着(99km)。旅館が2つあったので、どちらにするか迷ったが、ツーリングマップルには山水閣と書かれていたので、そちらへ行く。しかし、湯治棟の露天風呂は中で一緒になっているような、よく分からない構造だった。
入浴料400円。受付では、入浴客にも関わらず、しっかりと横に付いて丁重に案内してくれる。実に湯治宿らしくて、嬉しい限り。しかし、これには困ってしまった。汚れた格好のときは、ぞんざいな対応の方が気が楽なのだ。靴がまだ乾いてなくて、当然足も湿っている。この事に気づかれると、お互いに気まずくなってしまう。タイミングを見計らって、視線が外れた瞬間に、素早くスリッパに履き替えた。靴を洗っておいたのは正解だった。泥と雨で汚れた靴は、かなりの悪臭を放つから、とても玄関先に置いてはおける物ではない。人間の生活の戻るには、いろいろ大変なのである。(笑) ![]()
13:15発。今日は、早池峰山麓まで行って、明日は早池峰山登山の予定。時間に余裕がありそうなので、想い出の地“遠野”へ行ってみようと思う。
遠野に近づくに連れ、複雑な心境になる。遠野へ来たのは、随分と昔の事、バイクではなく、友人たちと訪れたのである。そのときの遠野の印象はとてもいいものだ。こういう場所を再訪するには、ある程度、勇気が必要。良い印象を壊してしまう可能性は高いし、伴って浮かんで来る、過去のイメージと対峙せねばならないからである。そんなこともあって、今まで遠野の再訪を避けていたのだ。そんな遠野へ足を踏み入れる。 陽炎に揺れるホップ畑が、見慣れない光景をつくっている。 「あぁ、ビールが飲みたい…、キンキンに冷えたビールが…」。ごくりと咽を鳴らして、カッパ淵を後にした。
この先は山の中だから、買い出しをしておこうと思ったが、来た道を戻るのも嫌なので、街と離れる北へ進む。この先、店は無いかと思ったが、荒川高原への分岐近くの小さな店で買い出し。こういう店って、味があるので、店内をくまなく観察してしまい、時間が掛かってしまう。 ![]()
16:37河原坊キャンプ場着。干しながら走ったタオルがなくなっていた。 管理棟らしきものを探すが、そういうものは無いようである。残念ながら、ビールは手に入らないようだ。ブナ林に囲まれたキャンプ場というか天幕場は、2・3張、小さなテントがあるだけ。居心地は、良さそうだ。山深く、静かなのがgood。
テントを張り終わって、メールを読んでいるときに声を掛けられた。今回は車だが、元はツーリングライダーの福岡の男性。同じく、明日、早池峰山に登るという。一年間南米を自転車ツーリングしてきて、春に帰国後、ふらふらしついでに、東北・北海道の山を登るという。放浪人生を歩む人ではなく、これからは定職に就いて普通に生活する意向の人である。 今日の事。明日の事。今日の温泉、昨日の温泉。今回の行程。福岡。東京。東北の山。日本の印象深い場所。日本の離島。日本を走る外国人チャリダー。九州の山。カセットガス・プリムス両用の韓国製ランタン&コンロ。韓国買い出しツアー。南米の生活費、日本の生活費。南米・世界放浪者の帰国後の生活。1年間の南米自転車旅行/費用130万円。アンデス山脈。パタゴニア。アコンカグア。マチュピチュ。イースター島。ガラパゴス。アマゾン。ウシュアイア。南米でのマス釣り。強盗。ゲリラ。内戦。入国審査。ウユニ塩湖、GPS。藤原寛一御夫妻。T野沢U子氏。現地語学学校。南米の女性。ペルーでの一般家庭ステイ。日本人旅行者、外国人旅行者。日本人チャリダー、外国人チャリダー。日本人ライダー、外国人ライダー。日本人移住者。スポンサー付きの旅行者。日本人宿。ブッシュキャンプ。過酷な標高5000mの峠越え。旅行時の肉体的な負荷。病気。アライテント。英語。スペイン語。関西弁。南米・自転車タイヤ事情。南米の料理。南米から見る日本。南米で思う日本。帰国して思う日本。などなど… 質問責めの傾向はあったけれど、実に楽しい夜を過ごせた。とっくに日付が変わっていたことに驚いたりしながらも、話は尽きなかった。 「明日にでも、ちょいと南米へ行ってみるか」と思えるほど、身近に感じた。 眠ってしまうのが勿体ない…
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